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鍼灸師の先生へ(お伝えしたいこと)

私は歯科医師であり、同時に鍼灸師でもあります。

その立場から、大切な考えをお伝えさせてください。

ここでご紹介している歯科はり治療(歯科医師・医師が行うはり治療)は、鍼灸院で行われているはり治療と「同じことを別の場所で行う」という発想ではありません。

私は、役割が少し違うものとして考えています。

はり治療は本来、とても奥が深く、時間をかけて全身を診ることで、体質やバランスそのものを整えていく力を持っています。

その力を最も発揮できる場所のひとつが、鍼灸院です。

鍼灸院では、患者さんの体質や生活背景まで含めて丁寧に向き合い、慢性的な不調や長年続く症状に対して、じっくりと治療を行うことができます。

これは、短時間の診療枠の中ではなかなか実現しづらい、鍼灸院ならではの大きな価値だと私は感じています。

一方で、私が歯科や医療の現場で行うはり治療は、設計の考え方が少し異なります。

服を脱がせることなく、顔面・頭部・手足の要穴を中心に行う、シンプルなスタイルです。

診療の流れの中で短時間に行い、筋緊張や自律神経の乱れ、顎や頭部の不調など、歯科・医科診療と関わりの深い部分を主に扱います。

この方法は、はり治療のすべてを完結させるためのものではありません。

どちらかというと、「はり治療を知ってもらうための入口」としての役割を意識しています。

日本では、はり治療を受けたことのある方は、まだ全体の約4%ほどと言われています。

興味はあるけれど、
痛そう
ちょっと怖い
よく分からない

そんな理由で、なかなか一歩を踏み出せない方が多いのが現実です。

そのような方にとって、普段から通っている歯科医院や医療機関で、顔や頭、手足だけのはり治療を体験できることは、大きな安心につながります。

そこで、
思っていたほど怖くなかった
体が少し楽になった
もう少し続けてみたい

そう感じたときに、鍼灸院という選択肢が自然に浮かんできます。

私は実際に、歯科や医科の現場ではり治療をきっかけに、鍼灸院へ通うようになり、体調が大きく変わっていった方を何人も見てきました。

はり治療の良さを知ってもらい、必要な方が、安心して鍼灸院にもつながっていける。

その流れをつくることも、医療機関側が担える大切な役割のひとつだと私は考えています。

もし、日本ではり治療を受ける人が、4%から10%、20%へと増えていったら、医療の選択肢はもっと広がり、患者さんにとっても、よりやさしい社会になるはずです。

医療機関と鍼灸院が、それぞれの得意分野を生かしながら、患者さんを中心につながっていく。

そんな未来を目指して、歯科医師や医師がはり治療を学ぶ意味があると考え、この取り組みを行っています。         英保武志